剣城くんが元々優しい人なのは、1年の時から知っていた。

彼のことだから文句を言わず要領よく色々こなしていたのだと思う。


ため息をつき、日誌を書こうと再開したが、またもや穴が開きそうなくらい見つめられ、それどころではなかった。


「…あのさぁ、剣城くん、もう帰っていいよ。窓は私が閉めとくし。することなくて暇ならここにいる意味ないでしょ」


我慢できなくなって、キッと彼を睨みつける。


「大丈夫だよ、気にしないで続けて」

「いや、無理だから!何で私が日誌書いてるとこずっと見てんの!?やり辛いんだけど!!」


見ててそんなに楽しい!?

もしかしてこの人、私の字が汚いから心の中で馬鹿にしてるのでは…!?


「俺、日誌見てるんじゃなくて、盾石のこと見てるんだけど」

「はあっ!?何言ってんの!?」


意味のわからない発言に思わず怒りをあらわにしてしまう。

一方、眉間に皺を寄せている私とは反対に、剣城くんは先程と変わらない様子だった。


「だから、俺は盾石のこと見てんの」

「見なくていい!……大体、ただのクラスメイトってだけなのに、よく好きでもない女子のこと見てられるね」


見られる側の気持ちをもう少し考えていただきたい。