剣城くんは押し強い


体操服の色のラインが青だから同級生なのはわかる。

でも、私はこの男子とクラスが一緒になったことなど一度もない。

見失わないように男の子の後頭部を見ていると───…。


「おっ、盾石じゃん。何してんの?」


先程まで1年生から3年生の女子生徒たちから写真撮影に捕まっていた剣城くんが私の姿を見つけて声をかけてくる。

イケメンって学校行事の時いつも大変そうだな…と呑気に思いつつ、

「あの前に歩いてる方にお呼び出しされまして……」

どんどん先を歩いていく男の子に手で示しながら答えると、剣城くんは僅かに目を細めて「ふーん…」と返事をした。


「…あの人、盾石がついて来てないの気づいてなさそうだけど?」

「…だよね、相当緊張してるんだろうね」

「……」


手と足が同時に出るほどだからよっぽど何か悩み事があるのだろう。

自分の悩みを他人に打ち明けるのって結構勇気がいることだもん。

…まあ、何で相手が私なのかは謎だけど。


「そんなことより盾石、飲み物買いに行くのついて来てよ」

「えっ、はっ、何急に。…ってか!私あの人に話あるからって言われてついて行かなきゃなの!!」

「どうせ大した話じゃないって。ほら、行くよ」

「なっ…ちょっと…!」


腕を掴まれ、半ば強制的に歩かされた私は、先を行ってしまう男子とは反対方向に足を進めた。