剣城くんは押し強い





午前の部の競技がプログラム通りに着々と進んでいて、テントの中でぼんやりと綱引きに奮闘している生徒たちを眺めていた。

ちなみに私は玉入れに出場したが、1回戦で敗退し、呆気なく出番は終わってしまった。

競技も玉入れしかエントリーしていなかったから何もすることがなく、ただただ暇でしかない。


そして現在、綱引きは午前の部の最後のプログラムとなっている。


「桃愛すごい形相で綱引きしてて面白いね」

「ももちゃんサバサバしてるけど意外と負けず嫌いだからね〜」


座りながらクラスの女子たちとももちゃんの活躍を見守る中、「盾石さん」と後方から誰かに呼ばれた。

一瞬、剣城くんかと思ったが、彼は私のこと『盾石さん』なんて呼ばない。

振り返ると違うクラスの男の子が強張った表情で立っている。


「あの、少しお話しませんか?」

「……」


人違いなんじゃないかとキョロキョロ辺りを見回したが、どうやら私で間違いないようだ。


「…私ですか?」

「はい、盾石さんです」


"盾石"という苗字はこの学校では自分しかいないと思うから合ってるんだろうけど───…一体何の用だろう。

大人しく彼の後をついて来てしまったが、この人は誰なのか。