剣城くんは押し強い



「あの、私やっぱ何もしな───…」

「なになに、柚奈の髪決めてんの〜?」

「ウチらも柚奈の髪型決めた〜い」


自分の身なりを整えたクラスメイトたちがわらわらと周りに集まってきて、逃げる術を失ってしまう。


「も、ももちゃん私───…」

「よし、柚奈!最っっっっ高に可愛くしてあげるからね!!ほらほら、皆も手伝って〜!!」


ももちゃんの声かけでクラスメイトたちは化粧品やら櫛やら髪ゴムやら何やらと取り出して、彼女らの思うがままに私の顔面と髪をいじり出したのだった。










『───まもなく、開会式を始めるので各自クラスのテントに椅子を置いた生徒は朝礼台の前に集まってください』


運動場へとやって来て、生徒たちが朝礼台付近に集まり始める中、

「盾石」

剣城くんの呼ぶ声がした。


「今年は三つ編みなんだな。いいじゃん、かわいいね」


そう言って三つ編みの毛先部分をつまむようにして遊び出す。


───そう、今の私の髪型は、"ゆるふわ三つ編みおさげヘア"というヘアアレンジをしてもらった。

しっかりと三つ編みにするのではなく、少しゆるめにやんわりと髪が編み込まれた状態だ。