「ゆずな毎日自慢してたよな〜。『これもらったの〜!』つって、嬉しそうな顔でさ〜」


懐かしそうに押し花のしおりを見つめる柚希。


「…それ、誰に貰ったのか全く記憶にないんだけど」

「……」


ぽっかりと一つだけ穴が開いているかのように、何故だかそのしおりを貰った時の記憶が何もない。



「柚希は知ってるの?その栞を私にくれた人のこと……」



その四葉のクローバーのしおりを受け取ったのは、たぶん、幼い頃だったと思う。

柚希から聞いた話だったから正直あまりピンときていないのだけども…。


じっ…と、押し花を眺めていた柚希はちらり、横目で私を見た後、

「さ〜っ、誰だったっけな〜…」

濁すような返事をして、そのまま勉強机の上に戻した。


「そーだ、父さんが朝食にサンドイッチ作り置きしてくれたんだよ。一緒に食べようぜ」

「…うん」


柚希があからさまに話題を変えたので、それ以上この押し花について聞くことは出来なかった。