槍田くんだって、私のこと好きじゃなかったから告白をしなかっただけ。
私はもう中学の時みたいに自惚れたくない。
期待なんてしない。
惨めな気持ちになんて、なりたくないの。
「…盾石?」
私の反応がないことに気づいた剣城くんは、心配そうに声をかけてくれる。
「……」
「……」
返事をしない私の後頭部をじっ…と見つめた後、顔を耳元へと近づけて。
「……ひぁっ!?」
ふっ、と耳に息を吹きかけられた。
ビクッと体が反応し、聞いたこともない声が喉の奥から出てしまって。
一気に全身に熱を帯びていくのがわかった。
両手で口元を押さえ、恐る恐る振り返る。
「「……」」
剣城くんが何を考えているのか全くわからない表情で私を見ている。
反対に私は真っ赤な顔で自分の心臓の音しか聞こえない。
限界がきて、居た堪れなくなった私は、ゆっくりと窓の外に向かって指をさす。
「……あっ、ゆ、ゆーふぉー……」
ありきたりな嘘をついたのに、剣城くんは素直に窓の方を向く。
そしてその隙に彼の胸を押し返して、勢いよく部屋から飛び出した。
真っ赤な顔の状態で、ひたすら廊下を全力疾走する。
うわわわわわわっ!?
もうやだ、剣城くんのバカ!!!!
心の中で剣城くんの悪口を言いながらがむしゃらに走り続けた。