「盾石」
黙って聞いてくれていた剣城くんが、優しい声色で名前を呼んだ。
「俺と結婚してほしい」
「……はっ??」
唐突なプロポーズに、顎が外れそうなくらいあんぐりと口が開いてしまう。
「なっ…えっ、きゅうになにっ……」
「ごめん。本当は、社会人になって、自分で稼げるようになって、ちゃんと自立してから伝えようと思ってたんだけど、我慢できなくなった…」
照れ臭そうに笑う剣城くんに、「意味わからん…」と、弱々しい声を出す。
「先にプロポーズしてくれたのは、盾石じゃん」
「いや、まあ、そう、なんだけど……」
いくらなんでも急すぎやしないか。
"結婚"というワードも一切出していないし、要素も何一つなかった。
…ってゆーか!私たちまだ高校生だし!!
「…俺、あの日、10年くらい前にさ。大きくなったら、盾石にプロポーズするって、ずっと決めてたんだ。今はまだ子どもだし、大人になるまでにはすごく時間がかかると思う。でも、待っててほしい。盾石を守れるような、支えられるような、そんな男になる」
真っ直ぐに、曇りのない瞳だった。
そんな彼の言葉に、じわじわと涙が溜まり始めていく。