「うん、俺も好き」
とどめを刺すかのように、とろんとした甘ったるい笑みを浮かべて、返事をする剣城くん。
そんな彼に私は、思わずズキューンッ!!と、心臓を矢で射抜かれた。
……どうやら、押し強い剣城くんが復活してしまったようだ。
ついさっきまで私と一緒にメソメソ泣いていたというのに…。
なんて切り替えの早さなんだ。
あと、あざとい。あざとすぎる。
私の反応を見て、剣城くんはくすっ、と笑ってから、
「…こんな、奇跡みたいなことってあるんだな」
夕焼けの空を見上げて呟いた。
ふわりと、少し冷たい秋風が吹いて、さやさやと揺れる剣城くんの前髪。
ぼんやりと穏やかに微笑む彼の横顔を見つめて、「…剣城くん」と名前を呼ぶ。
すると、不思議そうな表情で振り向く彼に、私はゆっくり口を開いた。
「…私ね、記憶が完全に戻ったわけじゃないんだ」
「……」
そう言うと、剣城くんは黙ったまま、私の話を聞く。