驚いた表情をする、剣城くんの瞳が涙で滲んでいく。


「……盾石」

「ん?どうしたの?」

「ぎゅう、したい……」

「へっ…」


"ぎゅう"!?

ハグとか、抱きしめたいとかではなく、"ぎゅう"!?


「ほ、抱擁でございますか…」

「……だめ?」

「〜〜っ、だめ、じゃない……デス…」


「ありがと」と、言った剣城くんは、伏し目がちに立ち上がって、私を真っ直ぐに見つめる。

そして、恐る恐る手を伸ばし、まるで壊れ物を扱うように、そっと優しく抱きしめた。


「「……」」


ドクドク、早鐘を打つ鼓動がお互いに伝わってくる。

その時、ずずっ、と鼻をすする音がした。


「…盾石」

「なに?」

「好き」

「…っ、うん。私もだよ」

「大好き」

「私も大好き」


声が掠れて、僅かに震えている。


「ずっと側にいてほしい」

「うん。側にいるよ」

「もう、俺のこと忘れないで…」

「忘れない。忘れたりなんてしない」


沢山辛い思いばかりさせて、ごめんね。

あと、それから───。







「一途に好きでいてくれて、ありがとう」



彼の背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめ返す。


同時に涙が込み上げてきて。

温もりに包まれながら、瞼を閉じた。