「誰かの幸せを願うっていう考え方は、すごく素敵なことだと思うよ。でも、まずは、剣城くんも幸せにならなきゃ意味ないよ」


見上げる剣城くんの瞳に、私の姿が映し出される。


「剣城くん、自分のことを幸せにできるのは、自分自身だよ!」

「……」

「───…って、お母さんが言ってた!」

「…そう、なんだ……」

「うん!だから、その…あのっ……」


せっかく言いたいことを考えていたのに、こういう時に限って、思いつかなくて、頭がこんがらがってまい、上手く言葉に出来なくなる。

誰かとこうして話し合うなんて、ほとんどないから、少し緊張してしまうけど、私には、伝えなくてはいけないことがまだあるんだ。


「……えっと、つまり、私が言いたいことは、昔も今も、剣城くんが好きってこと。剣城くんに幸せを願ってもらわなくても、ちゃんと自分自身を幸せにするし、私も剣城くんを幸せにする。だから剣城くんもさ、自分のこと、もっと大切にしてほしい。まずは自分を優先した後に、私を幸せにしてよ」


自惚れたくない。

期待なんてしない。

惨めな気持ちになんてなりたくない。


"恋愛なんて二度とご免だ"───そう思っていた私は、今、恋をしている。

昔の思い出と共に、大切にしたい人が目の前にいる。