「……剣城くんはさ、『私が幸せになってくれるなら何でもいい』って、言ってくれたけどさ」
「…えっ?あぁ、うん」
「剣城くんは?」
「へっ?」
さっきから話を聞いていると、剣城くん自身が幸せになる未来がないような気がする。
ほとんど私を最優先してくれていて、すごく嬉しいのだけども。
───でも、なんだろう。
まるで、自分のことなんてどうでもいいと言っているかのような話し方に、少し胸の辺りがモヤモヤし始めている。
「俺は別に…。盾石が笑ってくれるなら、幸せになってくれるなら、それでいいや…って、思ってたから。盾石が幸せなら俺も幸せだし、正直、自分のことはどうでもいいかなって……」
「いやいや!そんなのだめだよ!!」
ついつい、大きな声を出し、ソファーから立ち上がる。
「一瞬だけ、なんか意味わかんないこと言ってるなぁ…って思ったけども!私だけが幸せになって、剣城くんが幸せになれないなんて、そんなの嫌だ!!」
仮に、私が幸せになったとして、果たして、剣城くんは笑ってくれるのか。
どうせ剣城くんのことだから、きっとこれまでのちぐはぐな関係だった時みたいに、無理やり笑顔を作って、誤魔化して、一人で抱え込んだまま、過ごしていくに違いない。