剣城くんは押し強い


あれ、ちょっと待って!?
私にしか頼めないことって…まさか剣城くんを癒やすこと!?


「剣城くん騙したの!?」


てっきり雑用か何か任されたのかと思って仕方なくついて来たのに、剣城くんのメンタルをケアしろと?


「騙してないけど?」

「いや、剣城くん、不安そうな顔してたからよっぽど1人でやるのが難しい仕事押し付けられて、それを私が手伝う流れかと思ってたのに……」

「雑用とか仕事とか、俺そんなこと一言も言ってねえけど?」

「んなっ…!?」


私の反応を見て、剣城くんはくす、と笑った。


「言ったじゃん、盾石には俺のこと絶対好きになってもらうって…。昼休みの時のあれは盾石と2人きりになるための口実」


今日からガンガン押しまくるからね、と満面の笑みで言われて魂が抜けそうになった。


な、何言ってんだこの男…。


騙された挙句、のこのこと彼について来てしまった自分を殴りたい。


「ほら、ゆずちゃんおいで」

「…はっ!?何急に呼び方変えてん───…うわっ!?」


腕を引っ張られてバランスを崩してしまい、私はそのまま剣城くんの胸に体を預ける状態に。

ぎゅっと優しく包み込まれ、彼の香りが強くなった。