──『これ、覚えてる?』
──『これは、剣城くんが私のために作ってくれた大切な物……』
…なあ、何で思い出すんだよ。
──『剣城くんと昔、会っていたことも、この押し花をくれたことも、剣城くんとの思い出も、全部……何もかも思い出したのに……』
無理に思い出させたくなかったから。
俺を思い出す必要がなかったから、わざわざ柚希に協力までしてもらって、ずっと黙っていたのに。
初対面として、高校の同級生として、もう一度やり直したかった。
昔の自分じゃなくて、今の自分を好きになってほしかった。
「剣城くん」
本当、盾石には、調子を狂わされてばかりだ。
「好きだよ、剣城くん」
いつの間にか、視界が透明な滴でかすみ始めてきて、盾石がどんな表情で言ってくれたのかわからずに。
俺はただ、呆然とそれを聞いているだけだった。