『……ゆず』
『なあに?』
不思議そうに首を傾げるゆずなの手を両手で握り返す。
『けっこん、は……おとなになってからじゃないと、できないんだぞ』
『そーなの?』
コクリと、ゆっくり頷く。
そうだよ。
子どもの頃に交わす結婚は、ただの口約束にすぎない。
『ゆずはさ、おれのこと、すき…なんだよな?』
『うん、すきだよ』
『……だったらさ───』
『おっきくなって、おれのことまだすきだったらかんがえてやってもいいよ』
素直になれない、俺なりの精一杯の告白だった。
俺の返事にゆずなは、花が咲いたような笑顔で『やったー!』と万歳をしながら喜んだ。
『かんがえてくれるってことは……あやくん、ゆずのことすきってことだよね?』
『えっ!?いや、そんっ…ふ、ふつう、だよ……』
『そっかー!ふつうかー!』
『なにわらってんだよ…』
『えへへ〜』
そんな俺たちのやりとりを見ていたゆずきが、『ゆずちゃん、あやくん、おめでと〜』と、再び祝福してきたので、『うるせーよ』と言い返して、照れ隠しにゆずきの頭を小突く。
この時、俺は心に強く思った。
大きくなったら、今度は俺から『結婚しよう』そう伝えるんだって───。


