剣城くんは押し強い





「たーてーいーしっ」


時が止まってくれることはなく、気がつけば地獄の放課後がやって来て、気分が一気に重くなった。

上機嫌な剣城くん、どんよりとしたオーラ全開の私。

側から見たらとんでもない絵面では?

はあー…っと、深いため息をついて剣城くんの後ろをついて歩く。

すると、ピタリ、目の前にいる男が足を止めた。

その拍子に彼の背中に思いきりぶつかってしまう。


「ここ」


鼻をさすりながら見上げると、「国語準備室」と書かれたルームプレートが下げられている。

剣城くんは扉を開けて「どうぞ」と先に中へと入れてくれた。

軽く会釈をして、剣城くんの気遣いに甘える。


中を見渡すと、学校の先生がよく使っていそうなオフィスデスクが目に入り、その上にはノートや授業で使う資料が山積みになっている。

更にその机の向かいにある2人がけの白いソファーがぽつんと置かれている。


ぼんやりとその2つを眺めていると、ガチャリ、後ろの方から鍵を閉める音が静かに響いた。


…ガチャリ??


「この部屋、俺の叔父……刀根(とね)先生の個室みたいになってんだけど、俺は親戚という立場を利用してよくここでくつろいでんだ〜」