『あやくん、おはなあげる』



学校の帰り道で、ゆずなが一輪の花を俺の前に差し出した。


『なんでひまわり?まだきせつ、なつじゃないけど?』

『このまえ、おはなやさんにいったときにね、おかあさんがかってくれたんだ〜。あとね、あやくんにもあげたかったから、チロルチョコのおかえし』

『いつのはなしだよ…』


そう返事しつつも、『ありがと』と礼を言ってひまわりを受け取った。


『そのひまわりね、おかあさんがだいすきなおはななんだ〜!』

『ふーん。……じゃあ、ゆずは?』

『えっ?』

『ゆずは、おはなすきなの?』

『うん!だいすき!』


ゆずなは、目を細めて、微笑んだ。

彼女の笑った表情が、キラキラと眩しい。

次の瞬間、心臓が大きな音を立てて、ドクドクと忙しく鳴り響いた。


なんだこれ。

なんでこんな胸辺りが苦しくて、うるさいんだ。

こいつの笑った顔は、毎日見てきたはずなのに、なんで今日はこんなにあたたかいんだろう。


『……ゆずは、すきなおはなねーの?』

『ゆず?ゆずはねー、クローバーとひまわりがすき!』

『ふーん』