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小学1年生の、とある4月のこと。
『ねーねー、いっしょにあそぼー』
『……は?』
公園のベンチに座って、1人のんびりと本を読んでいた時、そっくりな顔をした女と男が突然、目の前に現れた。
『なまえはね、ゆずきっていうんだ〜。こっちはゆずなだよ』
『……』
ゆずなと呼ばれた女子は、ゆずきの後ろに隠れていて、何も話さない。
そのかわり、じっ…と俺を見ていた。
『…おれ、いまどくしょするのにいそがしーんだよね。あそぶならほかあたってくんない?』
『ふーん。ねーねー、あのさー』
『おい、はなしきけよ』
ゆずきとゆずなは、聞く耳を持たずに、ぐいぐいと距離を詰めてくる。
『なんでおんなのこなのに、おとこのこみたいなズボンはいてるの?あと、なんでじぶんのこと"おれ"ってよんでるの?』
『……あ?』
今こいつ、なんて言った?
俺のこと、"女"って言ったか?
パタリ、読んでいた本を閉じて、そのまま立ち上がる。
そして、拳をぎゅっと握りしめて。
ポコッ、ゆずきの頭を思い切り叩いてやった。