▽side 剣城
───パタンッ。
扉の閉まる音が静かに響いた。
盾石に手を握られ、連れて来られた場所は、いつぞやの国語準備室。
──『単刀直入に言うから、よく聞いててね』
── 『私、剣城くんが好きなので、付き合ってもらっていいですか』
盾石の声が、言葉が、まだ耳に残っている。
「……盾石、なに、やってんだよ…。盾石は槍田くんが好きなんじゃなかったのかよ…」
2人は、両想いなんだって。
結ばれたんだって、そう思ったから、俺は───…。
「……言ってない」
「はっ…」
「私、『槍田くんが好き』なんて、剣城くんに一言も言ってない」
「……」
真っ直ぐな目だった。
曇りのない、澄み切った瞳から逸らすことができない。
あの頃から、そうだった。
ずっと変わらない。変わっていない。
盾石は、いつも真っ直ぐに俺を見ていた───。