剣城くんは押し強い


槍田くん、いくら何でも優しすぎやしないか。

私みたいな平凡な女に振られたというのに、私の恋の行方を気にかけてくれるなんて……。

良い人すぎて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「…あっ!おいっーす、あやとに矛杉!オレらのクラス、お化け屋敷やってるんだ〜。おまえらも来ねえ?」


───えっ…。


柚希の口から"あやと"と聞こえてきて、視線を勢いよく彼らの方へと向ける。


「あー…っと、ごめんな、柚希〜。俺 今から『我らの主張大会』に出場しなきゃなんだよ〜」

「ふーん、あやとも出んの?」

「いや、俺は矛杉の応援に行く」

「ふーん」

「柚希クン、もっと興味を持ってもろて」


不意に、顔を上げる剣城くんと目が合った。

彼は、一瞬だけ瞠目させ、その後、隣にいる槍田くんを見る。

そして、何かを察したかのように、すぐさま私から目を逸らした。


この瞬間、私は「……はあ??」と心の中で呟く。


目を逸らされ、ショックを受けたが、次第には、怒りがじわじわと込み上げてくる。