剣城くんは押し強い



──『好きだよ、盾石』


あの日以降、剣城くんとはほとんど目が合わなくなった。

合わないというか、合わせてくれない。

挨拶は返してくれるけど、すぐに友人の元へと逃げるように私の側から離れていく。


──『返事は、聞かなくてもわかってるから。ちゃんと、諦めるから。……この気持ちが消えるにはまだ時間かかりそうだけど…。迷惑かもしれないけど、もう少し、盾石を好きでいることを、許してほしい……』


やはり、彼の言っていたことがよくわからない。

"諦める"とは、何に対してなのだろう。

私を好きでいることをだろうか。

だから、あんなことを言ったのかな。


『───皆さん、おはようございます。今日は待ちに待った文化祭です』


校内放送で、生徒会長の挨拶が始まる。


「皆、聞いてくれ!!」


矛杉くんは、真剣な眼差しで、教卓の前に立つ。


「……ここまで来てくれて、ありがとう。今日は、『君のハートにズッキュン♡チュロス!!』のために、絶対大繁盛させような!!」


矛杉くんが涙ぐみながらそう言うと、「引退試合でもするんか?」、「チュロス売るだけなのに大袈裟すぎん?」とクラスメイトの呆れた声があちこち飛び交った。