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結局、剣城くんの発した言葉に理解できず、お互い気まずい状態のまま、文化祭を迎えてしまった。
「柚奈、できたよ」
私の髪をいじっていたももちゃんの声に、ハッと我に返る。
手持ち鏡を受け取って、確認すると、暗い表情をした自分の姿が映っていた。
「…ありがとう、ももちゃん。これ、何のヘアスタイル?」
「玉ねぎツインテール」
「結構自信あるんだ〜」と、誇らしげに言って、スマホのカメラで私の後頭部を連写するももちゃん。
「ヘアピンやヘアゴムを派手な色にして、カラフルに映えさせるのがポイントよ」
「…へー」
「何、その辛気臭い顔。…まあ、どうせ剣城のことでも考えてたんでしょ」
「ゔっ…」
図星を突かれて、何も言い返せなかった。
恐る恐る、視線を別の方向に移すと、クラスTシャツを着て、教室の中央で騒いでいる男子の集団が目に映った。
その中には、剣城くんもいる。
いつも通り、楽しそうに友人と話す彼。
最近は、剣城くんの押し強い攻撃が無くなった気がする。
……いや、"押して来なくなった"と言った方が正しいだろうか。


