剣城くんは押し強い





「好きだよ、盾石」




溜まっていた涙が、目尻からこぼれ落ちる。


私も好きだよ。

今も昔も関係なく、剣城くんが好きだよ。

そう伝えたかったのに、声が出ない。


「返事は、聞かなくてもわかってるから。ちゃんと、諦めるから。……この気持ちが消えるにはまだ時間かかりそうだけど…。迷惑かもしれないけど、もう少し、盾石を好きでいることを、許してほしい……」

「えっ…」


『諦める』って、どういうこと…?

『この気持ちが消えるまで』って、どういうこと…?


「剣城く──」

「日誌書けたから、出してくる。盾石は皆のとこ戻っていいよ」


剣城くんは、聞く耳を持たずに教室を出て行った。


───パタンッ。


扉の閉まる音が静寂に響き、一人取り残された私は、ただ呆然と彼が去って行くのを見送る。


…ねえ、剣城くん。

私たち、両想いなんじゃないの?

何で、諦める必要があるの?

わからないよ。

お互いを好きでいるだけじゃだめなの───?