それなのに、剣城くんは、笑って『好きだよ』って伝えてくれたこともあれば、真剣な眼差しで言ってくれたこともあった。
彼は一体、今までどんな気持ちで私を想っていたのかと考えると、苦しくて、苦しくて───。
「言ったら思い出していたかもしれないって?
……いや、無理だろ。盾石、バカなの?」
「……っ」
見たことのない、剣城くんの表情に、私は言葉を失った。
「事故に遭って、記憶が曖昧になってる相手に、無理やり思い出させようなんて、できるわけないだろ。盾石が俺のこと忘れてるんだったら、また初対面からもう一度やり直せばいいと思って、自分のことを好きになってほしいって、思ったんだ……」
苦しそうな、悲しそうな表情を目の当たりにして、涙で視界がぼやけていく。
「俺は、盾石には、昔の自分じゃなくて、今の自分を好きになってほしかった。『俺たちは、昔、会っていた』なんて、言うつもりは一切なかったよ。……まあ、何で昔のことを思い出したのかは知らないけど、今の俺らの関係は、"高校で初めて会った仲"、それだけだ。俺のことはただの高校の同級生だって思ってくれていい」
「でも、これだけは言わせて」と、剣城くんは、無理やり笑顔を作って、こう言った。


