──『1年の頃も盾石のこと好きだったから、しっかり覚えてる』
ちがう。
──『───…去年の時から盾石のことずっと見てたし、ずっと想ってた』
ちがう。
──『───…好きな人のことは、いつもよく見てるから、なんとなくわかる』
剣城くんは、あの頃から───10年も前からずっと、私のことを覚えていた。
ずっと、私のことを想ってくれていた。
「……っ」
複雑に絡まっていた糸がするすると解けていく。
更には、胸元辺りが抉られるように、苦しくて、痛みを増した。
「……っ、ゔぅっ……」
その痛みと共に、目頭が熱くなり、瞬きをすれば、すぐさま涙が溢れ出てきた。
……最低だ。私、最低だ。
事故に遭って、記憶が曖昧なのを言い訳にして、ずっと剣城くんのことを忘れていた。
ごめん、剣城くん。
ごめんね。
私は、両手で胸を押さえながら、嗚咽を漏らして。
一人、涙が枯れるくらいに、ひたすら泣き続けた。