剣城くんは押し強い


おそらく、これは私たちが1歳だった頃の日記だろう。

1ページごとに、ぎっしりと文字が詰まっていて、読み進める度に、『ゆずちゃんとゆずくんが可愛すぎる』という文章をよく見かけて、思わず笑みがこぼれた。


「母さんって、文章書けんの?父さんがよく『母さんは、語彙力が乏しい』って言ってた気がするんだけど……」


いつの間にか、トイレから戻ってきていた柚希が興味津々に私の隣に座って、お母さんの日記を読み始める。

ちらっ、と柚希を見た後、2冊目の日記帳に手を伸ばして、黙々と読んでいく。

所々、お母さんの心の叫びのような文章が面白くて、またもやくすり、と笑ってしまった。


一息ついてから、ふと、ある一冊の日記帳に目がいく。

それは、他の日記帳と比べて、少し綺麗なノートで、表紙の角っこが折れ曲がっていることもなく、摩擦か何かで黒ずんでいることもなく、まだ新品を使ったばかりのような、手触りだった。