それは、お父さんとお母さんの───2人の時間を作ってもらうこと。
お墓参りへ行く日は、3人でお母さんに伝えたいことを報告した後、私と柚希は、何も言わずにその場を去って、遠くからお父さんの様子を見るようにしている。
お父さんは、お母さんと何を話しているのだろう。
「…母さんが亡くなって、もう10年経つんだな……」
ぽつり、柚希が呟くようにそう言って、「もうそんなに経つんだね…」と答える。
お母さんの命日はまだ1ヶ月先ではあるが、毎年、家族の誕生日には、こうして墓地へと足を運ぶようにしている。
少し行き過ぎだと思われるかもしれない。
だけど、別にいいんだ。
どう思われたっていい。
お母さんは、私と柚希が7歳の頃に息を引き取った。
お母さんと私は、交通事故に遭い、奇跡的に私だけが生き延びて、気づいた時には記憶が曖昧になっていて…。
これまでの私だったら、『何で私だけ助かったのだろう…』とか、ネガティブな思考で、誰にも気づかれないよう、1人自己嫌悪に陥っていたり、事故の記憶が蘇ってきては、吐き気を催したり、色々悩まされることもあった。


