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車で移動して数分後。
「霊園」と書かれた看板を通り過ぎて、駐車場に到着する。
車から降りた私たちは、荷物を持って、ある場所に向かった。
お父さんは、大きめのリュックを背負い、柚希は、現地で借りることができる、プラスチック製の水が入ったバケツと手桶を持つ。
そして、私は、ひまわりの花束を片手に、3人で長い階段をのぼっていく。
階段をのぼりきった先には、段々状になった墓苑が見えた。
見晴らしのいい広い土地がいくつかあり、それぞれの土地ごとに、無数の墓石が整然と並んでいる。
この景色を見るのは、何回目だろうか。
ぎゅっ、と手に力を込めると、花束のラッピングがカサッと潰れる音がした。
お父さんと柚希の後をついていき、慣れた足取りで名前が刻まれた墓の前で立ち止まる。
その墓石には、水鉢や花立にごみや砂、木の葉などが散らばっていた。
私たちは、分担して作業を始める。
お父さんは、上台から芝台、墓周りに粉々としているゴミを掃き、柚希は、せっせと汚れている部分を洗う。
私は、花立に水を溜めて、幾本か束ねられた花を左右均等になるように供える。


