「えっ?あっ、うん!話せたよ!」
彼女の朗らかな笑顔に口角が上手く動かせない。
俺は今、どんな表情をしているだろう。
ちゃんと笑えているだろうか。
「自分の気持ち、伝えられた?」
馬鹿か、俺は。
そんなこと聞いてどうすんだよ。
盾石と槍田くんが何のために会っていたのかも知らないのに。
告白じゃなくて、ただ偶然に鉢合わせして話していただけかもしれないのに。
手が震える。
心臓もうるさくて、嫌な汗が背中を伝った。
盾石は、俺の質問にコクリ、と頷いて、
「…つ、伝えられたよ……」
恥ずかしそうに目を逸らし、頬を赤らめながらそう答えた。
「……へー」
この瞬間、彼女の反応や表情を見て、後頭部を鈍器か何かで思い切り殴られるような感覚がした。
「送ってくれてありがとう。また月曜日でね!」
いつの間にか、盾石の自宅前に到着しており、笑顔で手を振る彼女に、「うん、また月曜日」と返事をする。
───バタンッ。
玄関の閉まる音がした。
「……」


