剣城くんは押し強い


盾石も盾石だ。

上目遣いで頬を紅潮させて見つめてくるものだから、てっきり告白されるのかと都合の良いように解釈してしまったじゃないか。

お互い目が合った瞬間、まるで時が止まったかのような、周りの音を掻き消すくらい、ドクドクと、緊張した鼓動しか聞こえなかった。

本当、心臓に悪い。


「ごめん、ももちゃん。私、先に帰るね…!」

「ん?あぁ…そっか。頑張ってきなよ?」

「う、うんっ…!」


いつの間にか教室に戻っていた盾石は、鞄を持って弓地と何か話している。

ある程度話し合えた後、弓地に手を振って、どこか急いでいる様子で去っていく。

何か急用があったのだろうか。


「つるちゃーん!お片付けの時間ですわよ〜!」

「…あれっ?剣城、全然作業進んでねーじゃん。どしたん?今日どっか調子悪い?」


ぼんやり考え事をしていると、矛杉たちが顔を覗き込みながら声をかけてきたので、「いつも通り、元気だよ」と、へらりと笑って答える。

さっきまで、物凄い速さでドキドキしていたのに、今は違和感というか、違う意味でドキドキしている。

どうしてこんなに胸騒ぎがするのだろう。