剣城くんは押し強い



「……盾石」

「な、なにっ!?」


……これは一体、どういう状況なのだろう。


「いや、なんか、その……近くない?」

「えぇっ!?そうかなぁっ!?」


今まで盾石が自ら近寄ってくるなんて、一度もなかったのに……。

恐る恐る振り向くと───…。


「…っ!」


顔を真っ赤にした彼女とばっちり目が合った。

慌てて逸らして、もう一度視線を戻す。


「……」

「……」


柔らかそうな、白い肌が赤く染まっている。


どうしてそんな可愛らしい表情をするのだろう…という気持ちと、今すぐ抱きしめたい…という気持ちが混ざり合う。

顔が一気に熱を帯びていくと同時に、彼女の手を取ろうとした時───…。


「……ひっ!?」


盾石の制服のポケットから、スマホの振動する音が耳に入ってきた。


「ご、ごめん…」


盾石は、スマホを片手に急ぎ足で教室を出て行く。


ぽつん…と、取り残された俺は、先程の出来事を思い出して、深く息をついた。


…危なかった。

皆がいる前で何をしようとしていたんだ。