そして、私と槍田くんの関係が進展することなく気づけば卒業式。

友人たちからは

『槍田くん、柚奈に告白するんじゃない?』

『卒業式に告白なんてロマンチック〜♡』

なんて、肘をつつかれながら言われて照れくさかったが、少しだけ期待している自分がいた。


槍田くんに告白されたらなんて答えよう。
OKするべきかな。それかお友達からお願いします…とか?


ドキドキしつつ、槍田くんを横目で盗み見した。

しかし、槍田くんは私の所へは来ず、そのまま真っ直ぐ自宅へと帰ったそうだ。


一人で期待してしまった挙句、私のことが好きだという噂を鵜呑みにし、ただひたすら自惚れていた自分が恥ずかしくて、中学を卒業してから、しばらく落ち込んだ。

結局、槍田くんは私のことをどう思っていたのかわからないまま、高校生になっていて今に至るという───…なんともまあ、憐れな経験をしたものだ。

ただ自分だけ槍田くんに恋をしていたのがあまりにも悲しくて。

"後悔"という気持ちが大きかった。


私のこと好きじゃなかったのなら、あの時に噂なんて流れてほしくなかった。

『槍田の彼女』なんていじられて、冷やかさないでほしかった。

好きじゃないなら、頬を赤らめて『おはよう』なんて言わないでほしかった。


───もう、こんな惨めな思いはしたくない。


そう考えた私は、"恋愛なんて二度とご免だ"───そう決めていたのに……。


「剣城くんに告白されてしまった……」