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───とある金曜日のこと。
「盾石、そこにある赤色のペンキ取って」
「…あっ、うん!」
今日の盾石は、少し様子がおかしかった。
挙動不審でぎこちないというか、どこか緊張しているというか…。
不思議に思いながらペンキの方へ手を伸ばそうとした刹那、お互いの指先がちょんっ、と触れてしまう。
「…っ!」
びっくりした盾石は、咄嗟に自分の手を引っ込めた。
彼女の反応を横目に見た後、嫌な思いをさせてしまった…と、内心ショックを受けつつ、何事もなかったかのように作業を進める。
「……」
しかし、盾石がじーっ…と、穴があきそうなくらい見つめてくるので、それに耐えられなくなった俺は、頭を一生懸命に働かせて、何か良い話題はないかと考える。
……あれっ。
俺、いつもどうやって盾石と接してたっけ…。
「…盾石はさ、弓地と同じグループじゃなくてよかったの?」
「……へっ!?」
話題を提供する下手すぎやしないか…と、一人心の中で居た堪れない気持ちに陥る。
「宣伝係、女子少ないけどいいの?」
何とか笑顔を作ってそう聞くと、盾石は、顔を赤らめて、俯きながら俺の質問に答えた。