「…そっかあ。……やっぱり、卒業式の日に告白しておけばよかったなぁ…」

「……えっ?」


私の反応が予想通りだったのか、槍田くんは、眉を下げて小さく笑った。


「俺さ、本当は卒業式の日、盾石に自分の想い伝えようって、思ってたんだ。……でも、できなかった」


槍田くんの黒い瞳に私の姿が映し出される。


「告白できなかったのは、俺と盾石の気持ちが同じじゃなかったから。もし、俺が告白したとしても、盾石は優しいから、きっと返事をOKしてくれるんだろう…って思った。だから、いっそこのまま何も言わずに胸の奥にしまった状態でいようって、決めて、告白しなかった」



「なんとなく気づいてたんだ。盾石は、俺のこと好きでも何でもないんだろうな…って。俺のせいで、周りの人たちから散々騒がれて、嫌な思いだって沢山させたのに、その流れで付き合ってもらうのは、違うんじゃないか…って思った。そんなことさせたら、盾石に負担かけさせちゃうだろ?俺が原因で、苦しませたくなかった…」


そう言って、槍田くんは、再度微笑んだ。


「…っ、槍田くん…ごめん。……本当に、ごめんね……」