剣城くんは押し強い


少し腰を上げてから、一歩彼の方へと近づいた。

その勢いでお互いの肘がぶつかってしまい、ぴくり、剣城くんの肩が揺れるのが見えた。


「……盾石」

「な、なにっ!?」

「いや、なんか、その……近くない?」

「えぇっ!?そうかなぁっ!?」


剣城くんの質問に、あちこち目を泳がせながら知らない振りをした態度で返事をする。

距離感を誤って、まさか肩が密着するとは、私も思わなかった。

次第に心臓が早鐘を打っていき、周りの音を掻き消すくらい、うるさく鳴り響く。


「…っ!」


ゆっくり見上げると、剣城くんと思いきり目が合ってしまう。

2人同時に慌てて逸らした後、もう一度視線を戻して。


「……」

「……」


剣城くんの頬がほんのりと赤く染まっている。

…今なら『好き』だと言えるかもしれない。


剣城くんの瞳を見つめながら、彼の名前を呼ぼうと口を開いた時───。


「……ひっ!?」