***
来る金曜日。
槍田くんと会う約束をした当日ということもあって、少し緊張している。
文化祭の出し物の準備に励んではいるものの、やはり、槍田くんにどのように伝えればいいのか、そればかり考えてしまう。
「盾石、そこにある赤色のペンキ取って」
「…あっ、うん!」
隣で宣伝用の手持ち看板を一緒に作っている剣城くんの声がして、赤色のペンキが入った缶を慎重に移動させる。
「ありがと」
剣城くんがお礼を言った拍子にお互いの指先がちょんっ、と当たった。
「…っ!」
彼の手に触れたのは、たった一瞬だけだったのに、思わず反射的に自分の手を引っ込める。
高鳴る心臓を抑えつつ、バレない程度に盗み見ると、当の本人は、何も気にしていなさそうな態度で作業をしている。
私はこんなにも意識しているというのに、剣城くんは相変わらずいつも通り。
…さすが剣城くん。異性のボディタッチ(?)には、だいぶ慣れているご様子。
やはり、端正な顔立ちをした男は皆、異性との触れ合いなんて容易いことなのだろう。(偏見)


