夏休みに入る前は、授業中や休み時間 関係なく、隣の席から視線を感じ、彼の方を向くと嬉しそうに目を輝かせたり、時と場所をわきまえず『かわいい』などと言ってきたり。
それはもう、簡潔に説明できないくらい、色々なことがあって、恥ずかしさを通り越して疲労が完全に勝っていた。
4月頃、いきなり剣城くんに告白された日がなんだかすごく懐かしく思う。
「ねえ、それってあれじゃない?"押してダメなら引いてみる"ってやつ」
「えっ…」
ももちゃんの言葉にぱちくりと何度も瞬きをする。
───剣城くんが引く…?
あの剣城くんが押し強い行動をしてこないってこと?
『俺、今日から草食系男子になるから、そこんとこよろしく』
『…えっ!?剣城くん、急にどうしたの!?』
『もう押し強い攻撃はしないし、安心して』
『えぇっ……』
瓶底眼鏡をかけ、難しそうな参考書を片手に私を見下ろす剣城くんの姿が脳裏に浮かび上がった。
大人しい剣城くんなんて、全く想像できない。