『───ずっと好きだったんだ。あの日から盾石に恋をして、頭の中盾石のことばっかで、好きで好きでたまんなくておかしくなりそう…』
剣城くんの言葉が脳裏に再生される。
あの時は驚きと恥ずかしさで『何言ってんだこの男!!!』と叫んでしまったが、剣城くんが言っていた『あの日』とは、一体いつのことなのだろう。
剣城くんを初めて見かけたのは高校生になってからだ。
もしかして、私が覚えていないだけで昔、彼と会ったことがあるとか?
剣城くんみたいな綺麗な顔立ちの人なんて、忘れるはずがないと思うけどなあ…。
「ところで柚奈、あんた槍田のことはもう吹っ切れてんの?」
「…っ!!」
久しぶりに彼の名前を耳にして、ぐっと言葉に詰まった。
槍田くん。
私が中学時代に片想いをしていた男の子。
中学2年の夏頃───。
『槍田くん、柚奈ちゃんのこと好きなんだって〜』
『柚奈ちゃんは槍田くんのことどう思ってるの〜?』
ある日突然、槍田くんが私のことを好きだという噂が流れ始めた。
槍田くんは男女問わずの人気があって、とにかく優しい人だった。