Y高は、最寄り駅から4駅ほど乗った所にある男子校。
男子しかいないというのもあって、どこか迫力があるように感じる。
「あれ、盾石?」
すれ違う他校の生徒たちをぼんやりと見ていた時、突然誰かに名前を呼ばれる。
顔を上げると、目の前にいる人物に思わず息が止まりそうになった。
「……槍田、くん…」
すらりとした長い手足に、柔らかそうな黒髪。
タレ目がちな瞳が今はまん丸と見開いている。
今思い出したが、槍田くんは中学の時、バレー部に所属していた。
試合の日は、色んな学年の女の子たちが槍田くんを応援するために黄色い歓声をあげて騒いでいたのを覚えている。
まさか、高校でも続けていたとは思わなかった。
「久しぶり、元気してた?」
「う、うん。普通に、元気…」
槍田くんに話しかけられているからなのか、周りの生徒たちに不思議そうな視線を向けられる。
中には「誰?槍田の知り合い?」と、聞いている人もいる。
「あれっ!?柚奈じゃん!お前ここの学校通ってたん?」
「うわぁ…」
見覚えのある中学の同級生が槍田くんの後ろからひょっこり顔を出した。


