剣城くんは押し強い


***



放課後。

HRが終わって、すぐ隣の方に視線を向ける。

帰る準備を始める剣城くんの姿にドキドキしながら声を振り絞る。


「剣城く──」

「なー、剣城〜!」


矛杉くんを含め、数人の男子生徒たちが剣城くんの周りに集まり出す。


「この間、矛杉が1年の子に振られたらしいから慰め会として今から皆で遊びに行かね?」

「おい、てめコラ。でっかい声で言うんじゃないよ!」


弄られる矛杉くんに何人かがどっと笑う中、剣城くんは「ごめん、ちょっと待って」と言って、

「盾石、何か俺に用事あった?」

男子たちの声で掻き消されたと思っていたのに、どうやら彼にはしっかりと聞こえていたようだ。

そんな優しい表情と自分の声を聞き取ってくれていた剣城くんにきゅんっ…と、再度ときめいてしまう。


「…あっ、ごめん。彼女と帰る予定だった?」

「彼女じゃない!」


男子たちの問いに即、ツッコミを入れる。


まだ彼女じゃないもん。

剣城くんに『好き』ってことも伝えられていないのに……。


「……やっぱ何でもない」

「? そっか。じゃあ、また明日」