剣城くんは押し強い



「柚奈、大事なのは相手に言葉でどう伝えるか、だよ。柚奈の今の思いをそのまま剣城にぶつければいいのよ」

「私の思い…」

「とりあえず、ゆずなもあやとみたいに押し強い攻撃でもしてみれば?おまえ、今まで防御ばっかしてたし、たまには反撃してみてもいんじゃね?」

「反撃…」


それぞれ2人の言ったことを復唱する。


これまでの剣城くんの行動を振り返りつつ、私には彼みたいなアプローチは無理だな…と思った。


「…で、でも、剣城くんは私の…こ、好意に一生気づかないって柚希言ってたし、押したところで可能性ないんじゃ…?」

「わかんねーよ?両想いってことには気づかなくても、あやとみたいな押し強いタイプの人間って、本命(好きな人)から押されると案外弱いって言うじゃん?」


ニヤリ、口角を上げる柚希にももちゃんも「何それ、面白そう」と、悪い笑みを浮かべる。


そんな2人を他所に、私はこれからのことを考えた。

"恋愛なんて二度とご免だ"なんて、言っていたくせに、今、恋をしている自分がいて呆れを通り越して笑えてくる。


とにかく、告白はまだ心の準備がいる。

それに、大胆な行動は恥ずかしくてできないから…まずは『一緒に帰ろう』くらいは誘ってみてもいいよね?

よしっ!と意気込んだ私は、最後の一口のサンドイッチを食べ切った。