剣城くんへの気持ちを自覚してから、およそ1ヶ月。

最初の頃は、槍田くんが好きとか、"槍田くんなんてもう知らない"とか、色々心の中でほざいてしまったけれども。

正直なところ、槍田くんの時よりも、剣城くんの方がドキドキしている気がする。


何故かはわからない。

剣城くんとは学校とクラスが同じだからだろうか。

もし、槍田くんも同じ学校に通っていたら、槍田くんを好きになっていたのだろうか。


分かるはずもない未来を考えたって、意味がないのは、十分承知している。


無意識に剣城くんの横顔を見つめていると、不意に本人がこちらに振り向いた。

びっくりした私は、反射的に肩が飛び跳ねてしまう。


「…盾石」

「ななな、何でしょう…っ!?」


目を泳がせ、心臓が高鳴り出す中、一生懸命に平常心を装うフリをした。


「今からちょっとだけ話せる?」

「…えっ、うん」


そう返事をした後に、10分休憩を告げるチャイムが鳴り響く。

"文化祭"というビッグイベントにそわそわと盛り上がっていた教室が休み時間によって、更に騒がしくなる。

剣城くんが立ち上がり、「行こ」と促したので、私も釣られるように席を離れて、彼の後ろを追いかけた。