盾石の笑顔を守りたい。


───そう、心に強く思った。


「大丈夫、たとえ記憶がなかったとしても、思い出が2人を結びつけてくれる」


雷太さんは、「帰ろうか」と再度微笑んだ。


「柚希と柚奈が車で待ってるだろうしね。絢人くん、家まで送るよ」

「あっ、いや、悪いんで、俺は歩いて帰ります」

「えっ、そう?えっと、じゃあ…気をつけて帰ってね」


俺は「ありがとうございました」と、軽く会釈してから、歩き出そうとした時、

「絢人くん!」

雷太さんの呼び止める声がした。

不思議に思いながら振り返ると、顔を綻ばせた雷太さんと目が合う。


「久しぶりに会えてよかったよ!」


「じゃあ!」と、言って背を向ける雷太さんは、公園を後にした。


ぽつり、一人残った俺は、盾石の言葉をぼんやりと思い出す。


──『今までの思い出、ほとんど忘れちゃった……』


大丈夫だよ、盾石。

思い出さなくていい。

"今"の俺を見てくれるならそれでいいんだ。


盾石が笑ってくれるなら。

幸せになってくれるなら。


盾石のためなら、俺は何でもするよ───。