▽side 剣城



盾石は、俺の肩に頭を預けて、目が赤く腫れた状態で眠った。

遠出をして、1日中歩き回ったから疲れたのだろう。


目尻に溜まっていた涙をそっと拭い、もう一度彼女の手を握る。


───どうしてもっと早く気づいてやれなかったんだ。


盾石が事故にあって、記憶が曖昧になっていることは、自分の親から聞いていたので、もちろん知っていた。

しかし、彼女が1人で抱え込んでいた思いは今日、初めて知った。

ずっと盾石を好きだったのに、結局何もわかっていなかった。


救急車のサイレンの音が遠くから聞こえてきた辺りから、盾石の表情が曇り始めていた。

それなのに、俺は───…。

後悔がじわじわ、後から押し寄せてきて、情けない自分に嫌気が差す。


こんな時、"槍田くん"ならとっくに気づいて盾石を泣かさずに済んだのだろうか。

会ったことがないから、彼が一体どのような性格をしているのかもわからない。