「せ、セクハラだ!!剣城くん私にセクハラした!!!」
訴えてやる…!!
顔を赤らめながらキッと睨みつけるが、剣城くんには全く効果がなく、ただニヤニヤしているだけ。
「そんな怒んなくたっていいじゃん。俺は親切心で盾石のワイシャツについてたシールとってあげただけなのに」
剣城くんの人差し指には"M"と書かれた丸い透明のシールがくっ付いている。
「しーる…」
そういえば今日、新しいワイシャツに買い替えたんだった…!
昨日の剣城くんの唐突な告白がずっと頭の中でぐるぐる考えていたからぼーっとしていたのだろう…。
「おっちょこちょいな盾石もかわいいのな」
ふっと笑みを浮かべた剣城くんがワイシャツに付いていたラベルシールを私のほっぺたに貼り付ける。
『かわいい』
異性に面と向かって言われて、再度ぽっと顔が熱くなる。
「じゃあ、俺先に教室行っとくね」
ぽんぽんっ、私の頭を軽く撫でてから、剣城くんは颯爽とその場を去って行く。
シールを貼られた部分がじんわりと熱くて、頬をふくらませながら彼の背中を睨んだ。
そして、私たちのやりとりを黙って見ていたももちゃんが「ちょっとちょっと」と声をかけてくる。
「あたし完全に蚊帳の外だったんだけど。柚奈と剣城ってもしかして付き合───」
「ってない!!!」
食い気味に否定すると、「なーんだ…」とがっかりした素振りをする。
「…ま、とりあえず話聞かせな?」
「……」