剣城くんは押し強い



「……私もね、死にかけたんだって。お医者さんが私を救うために大変な手術をしてくれて、無事に成功した。事故にあった傷も綺麗さっぱりなくなって、今、こうして普通に生きてる。『奇跡だ』って、『よく頑張ったな』って、お父さんと柚希は泣きながら喜んでたよ。でもさ───…」



お母さんは?



お父さんは、私が一命を取り留めた時、ダムが決壊したかのような勢いで大量の涙を流していた。


「助かって、生き延びて、すごく喜ばしいことなんだけどさ……でも、私、思ったんだ。『何で私だけ助かったんだろう?』って……」


じわじわと、目頭が熱くなっていく。


「お母さんは1人、痛くて苦しい思いをしたのに、何で私だけ……」

「盾石だって、痛くて苦しい思いしたんじゃないの?」

「…っ、そうだけど、そうなんだけどさ……違うんだよ。私も……私もお母さんと一緒に死んだらよかったのにって……」


自分が助かったにも関わらず、そんな最低なことをずっと考えていた。


「……盾石は、柚希とお父さん置いて逝くつもりだったわけ?」


グッと目に力をこめ、涙を流さないように剣城くんの方へと顔を上げる。

彼は、苦しそうな表情で私を見ていた。