───やってしまった。
それが、心の中の第一声だった。
「はい、水」
「……アリガトウゴザイマス」
公園のベンチに腰を下ろして、放心状態になっていると、剣城くんが自販機で水を買ってきてくれた。
数分前、私は好きな人の前で思い切り吐いた。
吐き出した汚物を見られた挙句、介抱されるなんて……。
今日、この瞬間、黒歴史という思い出に刻まれようとしている。
「「……」」
剣城くんは、何も聞いてこない。
気を遣ってくれているのか、あるいは、ドン引きのあまり言葉が出ないかのどちらかだろう。
「柚希に盾石のこと連絡したら、お父さんと一緒に車で迎えに行くってさ」
「……そっか」
……迷惑、かけちゃった。
お父さんにも、柚希にも、剣城くんにも。
足下に視線を落として、両手の拳を握り締める。
「……私、小1の時、交通事故にあったんだけど…」
口を開くと、剣城くんが話さなくていい…と、言いたげな瞳で首を横に振った。
「剣城くんにだからこそ、聞いてほしいの」
剣城くんになら、話してもいいかもしれない。
そう思った───。


