「まあ、もういい。過ぎたことだからな。今更グダグダ言っても始まらん。それよりもこれからのことが大事だ」
理屈も常識も通じない者を説き伏せようとしても無駄なことだったな。
「これは決定事項だ。もう一度言う。エドガー殿との婚約は白紙。リリアは修道院に行き人間として一から学び直すことだ。これは絶対に覆らない。許可が下り次第出発してもらう。いつでも旅立てるように準備しておきなさい。いいね」
「イヤ。なんで。あたしはエドガーと結婚するの。約束したのに。お義父様、お願い。それだけはイヤよ。あたしはエドガーと一緒になるんだから」
声が震え、ぽろぽろと涙をこぼしながら必死に訴えるリリア。悲痛ともいえる叫び声ではあるが、もう遅い。
「だったら、努力をすればよかったのだ」
「した、したわ。あたしだって頑張ってた」
「それで、その努力の結果が王族への不敬と無礼な態度だったというわけか?」
「ち、違う。ちょっと、舞い上がっていて、だから……」



