「テンネル侯爵家令息エドガー殿との婚約は白紙に戻す。そして、リリアお前は修道院に入れることにした」
「はっ? 今、なんて言ったの?」
「かねてから言っていたはず。問題を起こせば婚約を白紙撤回すると。だから、きちんとマナーと教養を身につけるように約束していたはずだな」
「問題って、何?」
そこからなのか。
父は無になったまま、静かにリリアの様子を窺っていた。
「卒業パーティーでの騒ぎの件だ。お前の愚行で事業にも影響が出ている。婚約解消の件ではさほど影響は出なかったのだがな。今回はそういうわけにはいかなかったようだ」
あの時はブルーバーグ侯爵家の商会がうちの商会に新規参入してくれたおかげで批判は免れた感はある。
相手は格上の力のある侯爵家、その気になれば婚約者の浮気相手の男爵家など簡単に潰してしまえる。そうなってもおかしくなかったのに、敵意を持つどころか取引に応じてくれたのだ。
今では大お得意さまで業績が伸び取引先も増えて売り上げも右肩上がりで感謝をしていたところだった。
順風満帆。支店も増やす計画もあったというのに。



