しゅんとしおらしく項垂れるリリアだが、反省の二文字すら空のかなたに吹き飛んでしまったとしか思えない。
まず、身分制度というものを理解していない。理解する気もないのだろうな。これで社交界を渡っていけるとでも思っているのだろうか。
まだ子供であれば教育の余地はあるし更生の道もあるのだが……
これが、侯爵家に嫁ぐなど不安要素しかない。またどこかでトラブルを引き起こすだろう、そんな未来しか見えない。
嫁に出し、厄介払いができると喜んでいた時期もあったが、それはとんでもない間違いだった。
エドガー殿が望んだことであったとしても、テンネル侯爵家にも悪いことをしてしまった。侯爵夫人教育も施してもらったというのに、恩を仇で返すようなことをしでかしてしまった。
ああ、頭が痛い。
「リリア。よく聞きなさい」
俺達の会話を聞いていた父が厳粛な顔で告げた。



