卒業パーティー以来、謹慎させているリリアだが、大人しくしているかと思えばそうでもなかった。
ずっと部屋に閉じこもっていては体に悪いと使用人が止めるのも聞かず部屋を飛び出そうとしたり、時には涙を流して使用人を懐柔しようとしたり。時には窓伝いに脱走しようとした。すべて、失敗に終わったが。
運よく邸を出ることができても行く先など一つしか思い浮かばない。
テンネル侯爵家だ。そこに行きついたとしてもすぐに連絡が入るだろう。また連れ戻されるだけ。卒業した後も続けるはずだった侯爵夫人教育は見合わせの状態である。
反省することよりも己の感情のみで衝動的に行動するリリアにうんざりとする。
「リリア。少しは反省したか?」
夕食のあと、応接室に呼び問いかける。
引っ越しのための荷運びも順調に進んでいる。引き渡しが迫っているからだ。この部屋もテーブルとソファに調度品が少しだけ。
がらんとした部屋に父も含めて三人で座っていた。



